常務執行役員 | 大割 寛

大割常務執行役員は、現在、COO/CDIO/CPOとして
国内外の事業・生産・情報基盤を横断しながら、
業務革新やAI活用、技術の事業化を推し進めています。
これまでの歩みと、これからのナルックスの未来について大割常務執行役員に語ってもらいました。
PROFILE
プロフィール
ナルックス株式会社 常務執行役員 COO兼CPO兼CDIO
大割 寛
前職では印刷製本機器メーカーにて営業職を経験したのち、母校からの紹介をきっかけにナルックスへ中途入社。
光学金型研磨の現場からキャリアをスタートし、ナノ加工技術の立ち上げ、装置開発、海外協業、工法特許申請、学会発表表彰、展示会、人材育成など、技術領域を中心に幅広い業務に携わってきた。
技術開発部長・CTOを経て、現在はCOO(事業執行)/CDIO(情報・業務革新)/CPO(生産)を担当。業務革新を中心として事業運営を支える技術・生産の横断領域を統括している。

「技術×生産×情報」ナルックスを導く3つの役割
現在の役職と、担当されている事業領域について教えてください。
現在は、常務執行役員として、COO(最高執行責任者)/CDIO(情報統括責任者)/CPO(生産統括責任者)を兼任しています。
執行役員は3名在籍し、それぞれの役割のもと、職務を行っています。
ナルックスの主力であるプラスチックレンズ事業を中心に、ガラスレンズや光学モジュールなど多様な製品群を対象として、事業運営・技術開発・生産体制・情報基盤といった、会社全体の中核領域を横断的に統括しています。
COOとしては、日本・中国・タイなど、国内外の拠点が持つ強みを活かしながら、グループ全体の事業設計や経営資源(人・モノ・カネ)の最適な配分を担い、長期的な成長基盤の設計と運営全体の最適化を主導しています。
CDIOとしては、2024年4月に新設された「業務革新本部」の担当役員として、労働生産性の向上を軸にした“攻めのDX”と、ISO27001に基づく情報セキュリティ体制の強化といった“守りのDX”の両面を推進しています。
自動化技術を活用し、人の作業を自動化できないか、なくせないか、また、ソフトウェアや仕組みに置き換えることでことができないか、など業務効率と精度を高めながら、全社的なデジタル基盤の整備を進めています。
CPOとしては、生産方式の標準化やプロセス改善、「見える化」の実現を通じて、品質と効率の両立を図り、生産体制の最適化を推進しています。
仕掛かり品や滞留品の削減など、現場レベルの改善にも注力し、“ものづくり力”の強化を通じて競争力の向上を目指しています。
日々の業務は多岐にわたりますが、どのテーマも最終的には 「事業をどう成長させるか」 という一点に集約されています。
経営・技術・現場をつなぎながら、状況に応じて優先度を柔軟に変えつつ、最適な意思決定と実行を積み重ねることを意識して業務を行っています。

事業領域において現在取り組まれているテーマを教えてください
現在、最も力を入れているテーマは「労働生産性の向上」です。
これは、業務革新本部として取り組む全社横断のテーマでもあり、同じ人員体制のままで生産性を高め、平均年収を引き上げていくことを目指しています。
具体的には、AIを活用した自動化・効率化の推進です。
これまで人が行っていた作業をソフトウェアや機械に置き換えることで、開発期間の短縮や日常業務の省人力化を図っています。
実際にChatGPTやCopilotなどのツールを導入し、「かつて開発に5年かかっていたプロセスが、今はスタート時点からプラスで進められる」ほど、生産性向上の効果を期待しています。
また、AIの活用と並行して、社員のリスキリング(再学習)にも取り組んでいます。
単にツールを導入するだけでなく、それを使いこなせる人材を育てることで、一時的な効率化ではなく、持続的に成果を生み出せる仕組みへと変えていくことを意識しています。
もう一つの軸として、「市場への戦略的なアプローチ」も掲げています。
生産性改革が“社内の効率化”だとすれば、こちらは“外に向けた成長戦略”です。
顧客の要望に応えるだけでなく、自社の技術を起点に新しい価値を提案できる体制をつくり、事業の長期的な発展につなげていきたいと考えています。
内部の仕組みを磨きながら、外に向けて新たな価値を生み出す、つまり付加価値成長を目指すことです。
この“内と外の両輪”によって、ナルックス全体の成長を加速させていくことを目指しています。

今の事業領域で感じる課題や、解決すべきテーマはありますか?
大きな課題として感じているのは、「意思決定と実行のスピード」です。
どんな取り組みでも、判断やアクションに時間がかかってしまう傾向があります。
もちろん、じっくり考えること自体は悪いことではありません。
しかし、その間にチャンスを逃してしまうこともあります。
だからといって、早く決断することが正しいわけではありません。
正確さを保ちながらも、判断と実行を早めること。
この「精度とスピードの両立」を実現する仕組みづくりが、これからの組織に求められるテーマだと感じています。
このテーマを実現するには、まず情報の精度を高めることが重要です。
為替や関税など、外部環境の変化は非常に激しいため、日々変化する市場の動きを正確に把握し、判断に必要な情報をできるだけ早く集めておくことを意識しています。
常に仮説を立てて検証を繰り返し、多面的に物事を捉えることが大切です。
さらに、“現場で得られる一次情報”の重要性も強く感じています。
Web上で得られる情報はすでに“二次情報”であり、AIを使えば誰でも同じ情報を手に入れられる時代になっています。
今後も最先端の技術で戦っていくためには、会社にとって重要な情報をいち早く収集することが今後の成長戦略に関わってきます。
だからこそ、情報を待つのではなく、現場でしか得られない一次情報を掴むことが、スピードと精度を両立するための大きな鍵になると考えています。
もう一つの大きな論点は、経営資源の確保と投資判断です。
何に人と時間とお金を投じるのか。
これは、ナルックスの成長を左右する最も重要なテーマだと思っています。
これまでは北川社長のように大きな決断ができる人がいたからこそ進められましたが、これからは次の世代が、その意思決定を自ら担っていく必要があります。
外部のコンサルや調査に頼ることもありますが、最終的に判断するのは自分たちです。
その判断を誤らないためにも、AIなどを活用して情報精度を上げ、現場で得られる一次情報を掛け合わせながら「より早く、より確実に決断できる組織」を目指していきたいと考えています。
役職が人を育てる。変化と成長の軌跡
ナルックスに入社されたきっかけと、これまでのキャリアについて教えてください
もともとは印刷製本機器メーカーで営業をしていました。
私は機械工学の出身なのですが、配属されたのが営業職で、人と話すことがあまり得意ではなかったこともあり、どうしても自分に合わないと感じていました。
当時はまだ若く、悩むことなく前職を退職しました。
退職後、自由な時間で趣味に没頭した時間もありましたが、資金が底をつき、しばらくして「そろそろ働かないとな」と思い、大学の先生に相談したところ、「お前の家の近くに、ちょっと変わった会社があるぞ」と紹介されたのが、北川化工(現在のナルックス)でした。大学の先輩も働いていて、「行ってみたらどうだ」と勧められたのがきっかけです。
当時は、光学研磨の人材が足りておらず、機械工学を専攻していた私に「やってみないか」と声をかけてもらいました。
私自身、「技術を身につけたい」という思いがあり、それがこの仕事を続ける原動力になりました。まあ出来ることはそれぐらいだったのかもしれません。
入社してみると、現場は金型を床に直置きするような環境で、当時はたばこを吸いながら作業するといったことが普通の環境でした。
それでも、気づけば夢中で手を動かしていて、一つの金型を磨き上げ、狙い通りに形になっていく過程を見るのが楽しくなっていきました。
毎日が試行錯誤の連続でしたが、そうした積み重ねが少しずつ自信につながっていったように思います。
振り返ると、無心で続けてきた時間の積み重ねが、今につながっているように感じます。
当時は目の前の作業に一生懸命取り組むことで精一杯でしたが、その経験が今の自分の原点になっていると思います。
これまでのキャリアの中で、印象に残っている挑戦や経験はありますか?
印象に残っているのは、ナノ加工技術の立ち上げです。
前例も見本もない中で、一から部署を立ち上げ、米国で航空宇宙、国防、天文学などの分野で使われていた技術を、光学レンズの製造に応用する取り組みを進めました。
同じようなことを行っている会社はほとんどなく、「自分たちの手で新しい技術を確立する」という思いで、試行錯誤を重ねてきました。
「同じ領域でやっている会社には負けたくない」という気持ちも強く、その想いが長く挑戦を続ける原動力になっていたように思います。
その後は、技術開発部長として、海外の研究機関やメーカーとの協業を進めながら、
装置開発や人材育成、部門の再構築などにも取り組みました。
山崎への本社移転の際には、建築会社との調整にも関わり、技術以外の領域にも責任を広げていきました。経験の幅が広がる一方で、改めて「開発とは何か」を考える機会も増えていきました。
当時を振り返ると、お客様や市場のニーズよりも技術の追求を優先してしまっていたように思います。
本来、開発は事業化のために行うものですが、当時はどこか技術を追求すること自体が目的になってしまっていたのかもしれません。
そうした経験を通じて、技術だけでなく“事業としてどう価値を生み出すか”を考える視点の大切さを痛感し、その意識の変化が後にCTOとして経営側の立場から組織全体を見るきっかけにもなりました。
その後、CTOを務めた時期には、「役職が人を育てる」ということを実感しました。
課長、部長、そして役員と、立場が変わるごとに自然と視野が広がり、求められる責任や判断の重みも変わっていく。その積み重ねが、自分自身の成長につながっていたように思います。
そして、そうした人としての成長を支えてくれたのは、やはり”人との関わり”でした。
お客様から「ナルックスに発注してよかった」と言ってもらえたことも、大きな励みになりました。
人との関わりや言葉の重みこそが、自分を動かしてきた原動力となっています。

仕事を通じて大切にしてきた姿勢や信念を教えてください
仕事をする上で大切にしてきたのは、「誠実であること」です。
嘘をつかない、裏表をつくらない。どんな場面でも正直でいることを一番に考えてきました。
これは技術の仕事でも同じで、数字やデータをごまかさない。
一度信頼を失ったら取り戻すのは簡単ではないので、そこは常に意識しています。
もう一つは、「約束を守ること」です。
納期や品質など、相手に対して言ったことは必ずやり遂げる。
たとえ難しい状況でも、できない理由を並べるのではなく、どうすれば実現できるかを考えるようにしています。
仕事をしていると、思い通りにならないこともたくさんあります。
でも、そういう時こそ「逃げない」「誠実に向き合う」ことが大切だと思います。
自分の都合ではなく、相手や会社にとって何が正しいかを考えて行動する。
そして、どんなことでも途中でやめてしまえば、何も残りません。
続けることが力になると信じて、これまでやってきました。
「継続は力なり」という言葉のとおり、続けることでしか得られない経験や信頼があります。
その積み重ねこそが、自分を成長させるために大切なことだと思っています。
共感を軸に、国や文化を超えるつながりを
「ONE NALUX」という言葉をどのように捉えていますか?
ナルックスは、国内外に複数の拠点やグループ企業を持つ中で、お互いの強みを活かし合い、支え合う関係があってこそ「ONE NALUX」が成り立つものだと考えています。
中国やタイなど、それぞれの拠点には文化や強みがあります。中国なら中国のスピード感、タイならタイの良い意味での大らかさ。
それぞれの地域が自らの特性を活かして発展し、地産地消のように“その地域で完結できる仕組み”を築いていく。その多様性を尊重しながら全体として成長していく姿こそ、ONE NALUXの本来の形だと思います。
一方で、本社のルールや考え方を一方的に押し付けてしまうと、現地の人たちは腹落ちできません。
国や文化によって価値観が異なるからこそ、「理解してもらう努力」「共感してもらう工夫」が必要です。
共感のない仕組みでは組織は動かない。だからこそ、理念や制度を伝えるときには、“相手がどう受け取るか”までを意識して説明することが大切だと思っています。
また、国によって仕事に対する意識や考え方も違います。
タイでも「少しでも条件が良ければ翌日に転職する」という文化もあるように、
会社に対する忠誠心や求心力は日本とはまったく異なります。
だからこそ、中心となる核のメンバーを大切にし、時間をかけて信頼関係を築くことが欠かせません。
そして、国が違うと共感できるテーマも違います。コミュニケーションという言葉だけでは、実際にはそう簡単に成り立つものではありません。
最近では、忘年会や交流会など、きっかけづくりとなる取り組みも始まっています。そうした活動からグループ全体で新しい関係を築いていければと思っています。
最後に、社員の皆さんへメッセージをお願いします
ナルックスは、光学部品メーカーの中でも、すでに一定の地位を築いていると思います。
この業界で、ここまでの規模と技術力を持つ中小企業はそう多くありません。
外から見ると、ベンチマーク(基準)として見られることも多く、それは長年にわたって社長をはじめ、先輩方が外部・内部の場で積み重ねてきた努力の結果だと感じています。
その土台の上に、私たちは今、仕事ができているという自覚を持つことが大切だと思います。
これから会社をさらに前進させていくためには、社員一人ひとりが自分の役割をしっかり理解し、ベクトルを合わせていくことが必要です。
「成長と分配」という社長の言葉にもあるように、会社の成長は社員の成長の積み重ねから生まれます。
それぞれが自分の立場や役割を理解して、自分にできることをやりきる。
それだけでも会社は確実に前進していくと思っています。
組織として忘れてはいけないのは、何よりも「誠実であること」です。
これは会社の中だけでなく、家族やプライベートでも同じです。
一人の誠実さではなく、全員が誠実であろうとすることが、会社の信頼につながっていきます。
そして、社員の皆さんに伝えたいのは「楽しむこと」と「個の力をつけること」です。
仕事を楽しむかどうかは、自分の気持ち次第です。
嫌だと思えばどんな仕事もつらくなりますが、「やってみたい」「もっと良くしたい」と思えば、そこにやりがいが生まれます。
気持ちを前向きに保ち、自分の意思でコントロールしていくことが大切です。
また、一人ひとりが“個の力”を高めること。
まずは自分で考え、自分で答えを出す習慣を持つことです。
人の意見に流されず、自分の考えを持つことで、部署としても組織としても力が発揮されていきます。
その集合体がナルックスという企業をつくっています。
楽しんで働くというのは、誰かに用意された場に乗っかることではありません。
自分で考え、行動し、自分の力を出すこと。
深く考え、掘り下げることで力がつきます。
私自身、自己評価では「あまりできていなかったかな」という反省点もありますが、
そうすることで仕事がより面白くなると実感してきました。
それぞれが自分の力を信じて、前向きに取り組んでほしいと思います。

INTERVIEW





