【2018年】カメリナ事業始動
「光・ナノ・ガラス」からサステナブル社会への拡張
将来を見据えた新規事業の開拓が必要であるとの考えから、人類の基盤となる「食・農」分野に着目し、小規模な農業事業を開始した。農業にはものづくりと通じる創造性や達成感がある一方で、生産者で価格の決定権がないことや農機や設備に巨額の投資が必要なこと、そして高齢化と担い手不足が進んでいること、といった構造課題が存在していた。補助金も少ないため農家の経営は苦しく、地域全体が疲弊していく状況を目の当たりにした。
「このままでは、日本の食を支える基盤が崩壊してしまうのではないか」という危機感から、“儲かる農業”とは何かを考え、「自分で価格を決められる」「他が作っていない」作物に挑戦することに取り組み始めた。
その中で出会ったのが、オメガ3脂肪酸を豊富に含み、酸化にも強い特性を持つ非常に優れた油を生む作物だった。欧米では4000年前から栽培されている一方、日本ではほとんど知られておらず、健康食品・化粧品・航空燃料など幅広い用途が期待される作物だった。
広島大学・藤田名誉教授から種を譲り受け、栽培方法を学ぶことから事業が始まった。当初は北海道で栽培を試みたが、カメリナは除草剤が使えず、夏期の雑草繁茂により収量が安定しない課題に直面した。そこで発想を転換し、本州の冬期にコメの裏作として栽培する方式を考案した。耐寒性が高く、雑草も少ないため無農薬栽培に適したこの方式により収量が安定し、コメ価下落に悩む農家の新たな収益源にもなった。賛同する農家も徐々に増え、生産体制は拡大した。栽培サポート、調整、販売まで統合的に運営する仕組みを整えていった。
その後、国内大手エネルギー企業より、SAF(持続可能な航空機燃料)の原料としてカメリナオイルを検討したいとの打診があった。カメリナはすでに欧米でSAF認証を取得しており、国内で唯一の生産実績を持つ当社に白羽の矢が立った。これをきっかけに経産省とも協議を重ね、福島・除染後農地約5,000ヘクタールを活用した国産カメリナ栽培プロジェクトを構想した。現在は浪江町で1.2ヘクタールの実証栽培を開始し、国産SAFの量産化に向けた挑戦を本格化させている。


また、カメリナオイルをSAFへ精製する過程で、プラスチック原料となる植物由来ナフサが生成される点にも着目した。これにより、従来の石油由来に代わるバイオプラスチックの可能性が広がり、光学製品やレンズ素材にも応用できるなど、ナルックスの技術領域と親和性が高いと考えている。
このようにカメリナ事業は、「農業」「エネルギー」「素材」という異なる領域をつなぎ、持続可能な循環型産業の構築を目指す取り組みへと発展した。日本の農業を守り、エネルギーを自給し、未来素材を生み出す。その挑戦を推進できるのは、挑戦を尊重し失敗を恐れず前進するというナルックスの企業文化があるからである。カメリナを通じて、地域と産業の新たな可能性を切り拓いていく。




































